柴田善臣騎手、メインの第11Rで11か月ぶりに出走した11番人気馬で今年1勝目。


左肩の治療に専念する為、昨冬より今夏まで全休していたJRA最年長騎手の柴田善臣氏(59才/東/フリー)が、本年9月より復帰し、月を跨ぐことなく無事に2025年の初白星を手にした。復帰後僅か10鞍目での勝利であり、今のところ2010年以来15年ぶりの勝率1割到達だ。

<JRAの公式動画より。決勝線>

気難しい愛馬と人馬一体。

柴田善騎手を導いたのは、これまで初出走以来全てのレースで氏を鞍上に据えており、逃げて二勝、出遅れから差して一勝と計三連勝してからそのままクラシックにまで調子に乗って顔を出しては暴走して沈んでしまった、勝手知ったるヤンチャ坊主、ピースワンデュック(牡4才/父グレーターロンドン/東・大竹厩舎)であった。

柴田善騎手が肩の治療へ入る前、菊花賞での二角先頭という明らかに場違いなスパートから自身初の連対漏れ、それも二桁着順の惨敗という凄惨たる結果が堪えたのか、ピースワンデュックも放牧の旅に出ていた。そして偶然にも人馬共にこの秋が復帰戦となったわけであるが、柴田善騎手のほうは既に数鞍乗って六番人気馬を2着にもってくるなど、衰えの無い騎乗ぶりを披露していたものの、ピースワンデュックは2025年9月27日のこれが復帰第一戦となった。

クラシック最終戦の参加者だが、その評価は・・・

実に11か月半ぶりのレースとなっては、G1はおろか重賞ですらないとはいえ、3勝クラスで何度も勝ち負けになっている馬たちが出そろったメインレースではやや心許無い。そして本走、秋風ステークスは右回り芝の1600m戦であったことがさらに馬券師たちを消沈させた。何しろピースワンデュックの四戦三勝2着一回という優良成績は全て左回りの競馬場で叩き出されたものであり、更にはこれまでの出走全レースが2000m以上の中長距離戦なのである。東西の違いは有れど、菊花賞における負の印象が色濃く残る右回りコース。そしてその馬が産まれて初めて体験するマイル戦。十六頭立ての十一番人気は致し方のないところであった。

しかし、馬体重は11か月前から僅か+2kgと、仕上がりの確かさを匂わせる辺り、何かが起きてくれそうな予兆はあったといって良かったのかもしれない。

テンから終いまで堂々たる見事な逃走劇。

大外枠からの無難な発馬を決め、グイグイと進んだピースワンデュックと柴田善騎手は、先手を取らんとする内側の各馬を二角手前でサッサと制し、先頭へ躍り出る。お山の大将を気取れて満足げなピースワンデュックの上で、柴田善騎手は、抑えるでもなく行かせるでもなく、ただ宥めるような姿勢で淡々と合わせていた。

対・大ベテランへの恐れなのか尊敬なのか、はたまたお爺ちゃんへの気遣いなのか、他馬の騎手は道中で一切柴田善騎手に喧嘩を仕掛けてこなかった。ピースワンデュックは1~2馬身ほど後続を離して悠々と、しかし3勝クラスのマイル戦らしいピリッとしたペースでレースを引っ張っていく。

<JRAの公式動画より。前を行くピースワンデュックと柴田善騎手に、誰も挑もうとしない>

そのまま三角、四角と進んでいよいよ直線。ここで早々と他馬に飲み込まれるかと思いきや、むしろ柴田善騎手の追い出しと共に力強い前進気勢を見せたピースワンデュック。中山の急坂に至っても後ろを突き放すかの勢いで登り切る人馬は、マイル戦らしくキレのいい末脚を披露せんとする後続に迫られて迫られて、しかしそれらの全てを持ち前のヤンチャ根性と老獪かつ負担をかけない追い動作で凌ぎ切り、見事クビ差の1着をもぎ取って見せたのだ。

人馬ともに輝かしい未来が。

これでまた、中央競馬界における様々な記録が塗り替えられた。人気馬たちが出遅れ気味だったとはいえ、道中で誰も柴田善騎手を競り落としにこなかったことには違和感があるが、決して老齢騎手に気遣ったわけではなく、休養明けの二桁人気馬を侮った結果だと、前向きに受け止めたい。

ピースワンデュックは今後の重賞戦線でどういった競馬を見せるのか。クラシックディスタンスからマイルまで、距離の融通が利くことが明らかになった今、柴田善騎手の記録伸張と併せて本馬に対しても夢は広がるばかりだ。


労働階級からの解放を志し、収入のアテもないのに突然脱サラ。後先考えないその姿勢に後悔しきり。

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